学習

認知面の教育

 赤ちゃんは1才前後の手遊び歌や、1才から2才にかけての探索行動をとおして著しく認知面が発達します。
 ところが、発達に問題をもつ子供はこの時期でつまづいてしまい、認知面が順調に発達しにくくなります。認知面の発達の遅れは、2才をすぎても言葉がでなかったり、しつけがしにくかったり、いろいろな遊びに興味を持たないなどという行動となって表面化します。
 こうした子供については、認知能力を高めるための教育をして遅れを取り戻し、かつ知的発達を促すことが大切です。
 磐城学園では認知能力の向上をはかるために課題学習の時間を設定して、学習指導を行なっています。
 課題学習は毎月グループ担当の指導者が子供の認知発達のレベルにあった課題を作成し、マンツーマンもしくは少人数のグループで指導をすすめます。
 以下、課題学習の目的及び課題作成上の留意点ならびに課題学習の成果、課題のテーマと内容についてのべます。


〈規則性の理解:黄色のバスはどこかな〜?〉

【1、課題学習の目的】
 (1)認知能力の向上をはかること
 (2)学習態度を育てること
 (3)知的好奇心を育てること
 (4)作業遊び(お手伝い)を育てること
 (5)対人関係を育てること
 (6)遊びの分野を広げること

【2、課題作成上の留意点】
 (1)子供の認知能力にあった課題を作成すること
 (2)課題は月ごとに作成し、主に6問とすること
 (3)課題の内容は視聴覚、言語、微細運動、生活習慣、社会性、コミュニケーション能力、と多岐の
    分野の課題とすること
 (4)それぞれの課題の内容は子供のレベルにあったものから指導をはじめ、徐々に努力しなければ
    できないレベルのものとすること
 (5)子供がやってみたいという気持ちをもつような教材を準備すること

【3、課題学習の成果】
 (1)知的好奇心を育て、認知能力が向上します。
 (2)課題学習の体験は、学習の場面だけではなく遊びや普段の生活や対人関係などの場面において
    いろいろなことを学ぶ態度を育てます。
 (3)課題学習で体験したことやおぼえたことが遊びの場面で生かされるようになり、遊びの質を高め
    ます。
    たとえば、学習で「色」がわかるようになると、部屋の中にあるいろいろな道具の色さがしをして
    遊びます。(これは青のイス、赤い本、緑の積み木、など)
 (4)課題学習をとおして子供とのコミュニケーションが成立すると、指導者の指示やしつけをすなおに
    受容するようになります。
 (5)学習の準備や片付けなどのお手伝いの体験をとおして作業の仕方を身に付けます。

課題のテーマ 課題の内容
目と手の協応動作 ・ペグボード  ・型はめ  ・積み木重ね  ・ビーズ通し  ・おはじき  ・コップ重ね
・ハンマーで叩く  ・スプーンですくう  ・折り紙  ・ボタンはめ  ・ハサミで紙を切る
・ハンカチを結ぶ  ・ヒモ結び  ・ホッチキスでとめる  ・セロテープをはる
・定規を使って線を引く  ・ハンカチをたたむ  ・洗濯バサミでハンカチをとめる
・食器の配膳  ・食器洗い  ・ほうきではく  ・洗濯物をたたむ
・履物を片付ける、はく
微細運動
(手指動作)
・はめこみパズル  ・シールはり  ・ビンの開閉  ・粘土遊び  ・ビーズ通し
・洗濯バサミでとめる  ・コップ運び  ・のりつけ  ・水のあけうつし  ・ハサミで切る
・ハンカチしぼり  ・ナイフで切る  ・紙を折る  ・紙をちぎる  ・ハシを使う
・豆など小物を小口のビンに入れる  ・だるま落とし  ・豆をスプーンで移しかえる
・ボタンのはめはずし  ・ピンセットではさむ  ・マジックテープをはがす
・ドアのノブを回す  ・パクパク人形を扱う  ・指人形を扱う  ・手指の体操
・トレー運び  ・トントン組み木  ・はめ絵  ・たいこをバチで叩く
・いろいろな楽器を叩く  ・糸巻き
視覚記憶 (1)絵カードや実物を見せた直後に隠し、隠した物が何かを答えさせる
(2)手本を見せた直後に隠し、手本と同じように構成させる
   積み木やブロック、ビーズ通し、図形(○△□など)並べ
(3)文字カードや数字カードを並べた手本を見せた直後に隠し、手本と同じように
   カードを並べさせる
(4)数個のコップの1個に玩具を隠し、どのコップに玩具があるか答えさせる
書く なぞり書き及び模写:直線、曲線、図形、数字、文字、いろいろな絵
手本と同じように書く:図形、人物、顔、食べ物、動物、花、乗り物、身のまわりの物
              文字、数字など
自由画を描く、迷路をたどる、点と点をつなぐ
形をとる:手、箱、図形など
色ぬり 図形をぬりつぶす
手本や実物と同じ色でぬる(バナナやりんご等の果物、○△等の図形)
ぬり絵(乗り物、動物、花、人形、果物など)
切る 直線、曲線、△□などの図形を切る、いろいろな絵や図形を切り抜く
照合 形や色の照合、絵カードと絵カードの照合、絵カードと実物の照合、実物と実物の照合
仲間集め 同じ物を集める(色、形、大きさ、用途別)
果物、乗り物、動物、菓子、野菜、身につける物、学用品など
パズル構成 2〜50切片、ジグソーパズル(10〜50ピース)
 (1)手本と同じように構成する
  積み木、ビーズ通し、シールはり、ブロックつみ、プラモデル、綿棒、マッチ棒
  カラー碁石並べ、プレート、おはじき
  ブロック:お城の塔、いろいろな乗り物や動植物、建物、図形など
 (2)イメージして構成する(積み木、ブロックなど)
動作模倣 手遊び歌、ダンス、リズム打ち、体操
欠所発見 絵の欠所(自動車の絵のタイヤの欠所など)、図形の欠所(四角など)
文字の理解 ・同じ文字の照合  ・文字を読む  ・文字を書く  ・絵カードと文字カードの照合
・カルタ遊び  ・文字積み木の組み合わせ  ・文字カードでことば作り
・ひらがな及びカタカナスタンプでことば作り作業
数字の理解 ・同じ数字の照合  ・数字を読む  ・数字を書く  ・数字カードと実物の数の照合
・数字積み木の組み合わせ  ・数字パネル遊び  ・数字スタンプ遊び
・数唱  ・物を数える
規則性の理解 一定の規則にしたがって数字や記号及びシール、ペグ、碁石、文字、おはじき等を並べる
比較の理解 大きい:小さい  長い:短い  太い:細い  高い:低い
絵カードや実物、円柱セット、ひも、積み木などを使って比較する
同異の理解 2枚の絵を比較して同じ点、異なる点をさがす
注視・傾聴 ・絵本  ・紙芝居  ・テレビ  ・ビデオ  ・パネルシアター  ・ペープサート
コミュニケー
ション能力の
発達
第1段階
 指さしの理解:おいで、ちょうだいなどの身振り、あいさつをする
          名前を呼ばれたら「ハイ」と言ったり挙手をする
第2段階
 ふれあい遊び:高い高い、いないいないばー、ハンモック遊び、お馬さん
第3段階
 少人数の活動に参加する:グループ活動やグループ学習に参加する
第4段階
 多人数の活動に参加する:ダンス、体操、ゲームに参加する、遠足、運動会
 発表会、散歩、順番を待つ

その他
 ・名前をおぼえる  ・勝ち負けの理解  ・ジャンケンやルールの理解
 ・応援  ・友達への関心を持つ
 ・コミュニケーションに有用な言葉の理解と使用
  (はい、いいえ、いや、だめ、できた、わかりません、どうぞ、ありがとう、
   かしてね、など)



【比較の学習:2番目に高いのはどれかな〜?】

【構成:同じように積み木を積もう】

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