言語指導

 こちらが言っていることはわかっているのに2才になっても言葉を話さない。耳が聞こえないのかと心配して聴力検査を受けてみたけれど聴力には異常がないと言われた。それなのにどうして言葉を話さないのだろう?
 磐城学園ではこうした言葉の遅れを持つ子供の言語指導に取り組んでいます。
 子供の発達には道筋があります。言葉の遅れは言葉だけが遅れているのではありません。子供が言葉を話すことができるレベルまで心身が発達していないためです。したがって、道筋をたどって心身を言葉が話せるレベルにまで発達させれば言葉は話せるようになります。
 その道筋とは赤ちゃんが生まれてから「ウマウマ」「ブーブ」の始語が出るまでの1年間の成長の道筋です。生後1年間の発達すべき課題については先に述べましたが、赤ちゃんは生後1年間に愛着形成などの情緒の成長手遊び歌や喃語の発達及び発声器官の機能の向上をはかります。
 こうした発達すべき道筋を教育や訓練によってクリアーすると子供は自然に言葉が話せるようになります。
 磐城学園のカリキュラムは言葉に対する注意力を高め、言葉を話す力をつけるように作成されています。
 朝の会、リズム遊び、体操、課題学習など、子供たちは一日中言語訓練の場におかれていると言えます。
 しかし、一日も早く人の話が理解できるようになり、自分の思いをお話できるようになって言葉でコミュニケーションをとれるようになるため、次のような言語指導に取り組んでいます。

 〈どうして答えないんだろう? 話さないんだろう・・・〉

【1、言語指導上の留意点】
 (1)話しかける時には子供とアイコンタクトをかわしながら話すこと
 (2)子供が話を聞いていることが確認できるまで、わかりやすい
    言葉でくりかえし話すこと
 (3)子供の表情や動作から子供の気持ちや考えていることを読み
    取ること
 (4)子供が言葉を聞こうとしたり、口の模倣をしたり、発音しようと
    した時はその行為をほめること

〈アイコンタクトをしながら話す〉

〈どうして泣いているんだろう・・・〉

〈口の形を模倣して発音練習〉


【2、言葉を話す力をつける指導】
 (1)おちついた生活環境を作ります
    学園の日々のカリキュラムの流れを変えずに、園外保育やボランティアとの交流保育や諸行事の
    スケジュールをたてて、子供が不安を持たないでいろいろな体験ができるようにします。
 (2)愛着形成を育て対人関係がとれるようにします
    対人関係の第1歩は愛着形成です。指導者と子供との心のつながりを強くするために抱っこや
    お相撲やふれあい遊びをします。また家庭でも母子間の愛着が育つように抱っこやお相撲や
    ふれあい遊びに取り組んでもらいます。
 (3)表現力を育てます
    手遊び歌やダンスや50音のかえ歌の学習により身体表現の力を育てます。
    身体表現で意思表現ができることを体験すると、子供は積極的に人とコミュニケーションをとろうと
    するようになります。


〈積極的にコミュニケーション:手を振ってバイバ〜イ〉
 (4)深い呼吸ができるように訓練をします
    体操の時、たくさん走ったり、歩いたりします。また家庭でも1日
    2〜3km位歩いたり走ったりします。子供は意識的に深い
    呼吸ができません。歩いたり、走ったりすると必然的に深い
    呼吸をともなうため、効果的な呼吸訓練です。
    さらに呼気量を多くするために吹く遊びを教えます。
    例:ピンポン玉吹き、ローソクの火を吹き消す、綿玉吹き、
      シャボン玉、笛、ラッパ、ハーモニカ、鍵盤ハーモニカ、
      へび笛、風船など

〈ピンポン玉吹き〉
 (5)発声するように誘導します
    不快な場面に出会うと奇声を出したり、大きな声で泣いたりしますが、楽しい快の気分の時に声を
    出して笑ったり、ワアーワアーさわいだりすることがまれです。そのため、くすぐりっこや大好きな
    遊び(ハンモック遊びや追いかけっこ)をたくさんして大声で笑ったり、声を出す機会を作り発声を
    誘導します。
 (6)歌を歌うことを教えます
    マイクを持って伴奏に合わせて「アーウーオー」と発声したり、あるフレーズの一音節を指導者の
    口の形を真似して言わせたり、また、歌をたくさん歌わせたりします。
 (7)体操の時、動作言語を言いながら体操をするように指導します
    例:跳ぶ時は「ピョン」といいながら跳びます。
      両手を合わせて手をたたきながら「パンパン」と言います。
 (8)あご、舌、唇などの発声器官の機能を高める訓練をします
    言葉の遅れのある子供は上手にかむことができなかったり、構音器官の機能がにぶいため、
    話そうとしても上手に構音ができません。そのため発声器官を意識的に動かす訓練をしています。
    主な訓練・・・舌尖の出し入れや舌尖を左右の口角に交互につける
            口を大きく開けたり、閉じたりする
            舌尖を挙上して上あごにくっつけたり、舌尖で頬を内側から押す
 (9)あいさつ言葉を一音節ずつ発音する指導をします
    「おはようございます」が言えない時期から、指導者が発音する時の口の形を模倣させ、一音ずつ
    発音させるようにしています。
 (10)課題学習で言葉の復唱をする指導をします
     いろいろな音を模倣して言う
     単語、二語文、三語文、短文を復唱する
     数個組み合わせた数詞を復唱する
 (11)要求語をその都度、一音ずつ模倣して言うように指導します
     例:やってください、〜をちょうだい、かしてください

〈要求語の練習〉


【3、言葉を聞く力を育てる指導】
 (1)毎月、聞く力をつける課題を作り指導します
    例:グーチョキパーの言葉をいろいろと組み合わせ
      て指示を出します。
      (グーチョキグーパー、パーグーチョキグーなど)
      子供は指示されたとおりに手指を動かします。
 (2)曲に合わせて手遊び歌やダンスをします
 (3)50音のかえ歌に合わせて決められた動作をします
 (4)いろいろな身のまわりの音や楽器の音を聞き分け
    ます
 (5)音源を探します
 (6)曲に合わせてリズム打ちをします
 (7)ゲームをします
    例:目隠し鬼で「おにさんこちら手のなる方へ」と
      誘導します
 (8)曲が流れている間は歩き、曲が止まったら立ち
    止まって指導者が「みどり」と言ったら緑色の物を
    探します。


〈「グー」の指示でグーを出す〉
 (9)絵カードを10枚並べておいて、指導者に指示された
    絵カードを子供が拾います
 (10)指導者に指示された身体部位をさわります
     例:頭、肩、ひざ、おめめ、お耳など
 (11)乗り物や動物に変身して音を言ったり、鳴き真似を
    します
     例:パトカー・・・「ピーポー」
       自動車・・・「ブーブー」
       犬・・・「ワンワン」     など
 (12)言葉の指示で学習します
     例:「〜と〜をちょうだい」と指示を出す
         (リンゴとバナナをちょうだい)
       ビーズ通しで指示されたように通す
         (赤、緑、青、黄色、だいだいの順番で
                      とおして下さい)

〈言語指示による学習:リンゴはどれかな〜?〉


【4、言語を理解する力を高める指導】
テーマ 指導内容
名称を教える 物、人、色、形、場所に関する名称を教えます
・これは何ですか?  ・〜をちょうだい  ・〜するものをちょうだい
・〜と〜をちょうだい
動作言語を教える 動作に関する言葉を教えます
・〜している絵はどれですか?  ・絵カードと同じ動作をしてください
・絵カードを見て何をしているか説明してください
指さし行動を教える ・指さしされた物を注視する  ・指さしされた所にペグをさす
・欲しい物を指さしする  ・指さしで指導者が誘導する
擬声語やいろいろな音を教える ・動物の鳴き声(犬:ワンワン)  ・楽器の音(タンバリン:タンタン)
・身の周りの物や音を聞き分けたり、音に関心を持つ
  自動車の音(ブーブー)、救急車(ピーポー)、水が流れる音(ザー)
  犬は何と鳴きますか?(ワンワン)、猫は何と鳴きますか?(ニャー)
  ヘリコプターはどんな音を出して飛びますか?
  叩くとチンチンという音が出る楽器はどれですか?
物の用途を教える ・〜するものはどれですか?  ・ハサミは何をするものですか?
・お茶碗はどんな時に使いますか?  ・色ぬりの時何を使いますか?
数詞を教える ・1〜10まで数唱する  ・いくつありますか?  ・〜個ちょうだい
・〜個ずつ並べなさい  ・合わせていくつですか?   などを教えます
同じ仲間を教える 動物、食べ物、乗り物、果物、身につける物、菓子、履物などの名称や仲間分けを教えます
例:食べ物の仲間集め・・・ミカン、リンゴ、ケーキ、パンなど
  動物の仲間集め・・・牛、馬、ヤギ、羊、犬、ライオンなど
言語指示の理解ができるように体験学習をする 〜をちょうだい、〜はどれですか?、〜をしなさい等の指示に従って行動するように指導します
集団行動においてしつけ上の指示を理解して行動する
 例:並びなさい、立ちなさい、イスを運びなさい、など
お手伝い遊びを体験させる お手伝いをさせて言葉の理解をより確実にし、言葉の実用化をはかります
例:「茶碗とハシを持ってきて下さい」
  「大きい皿2枚と小さい皿を3枚並べて下さい」
ごっこ遊びを体験させる 買い物ごっこ、料理ごっこ、動物園ごっこ、ままごと等のごっこ遊びを通してことばの実用化をはかります
あいさつ言葉を教える 場面に適したあいさつ言葉を教えます
例:おはようございます、こんにちわ、こんばんわ、さようなら
  おやすみなさい、ありがとう、ごめんなさい、など
人物の属性を教える 人の名前、呼び方、年齢、性別、仕事、学校、住所などを教えます
疑問詞に対する答え方を教える いつ、誰が、どこで、何を、どうした、などの答え方を教えます。
どうして、なぜ、についての答え方を教えます。
ストーリーの理解力をつける 絵本、かみしばい、パネルシアター、ペープサートを用いてストーリーの理解力をつける指導をします
ことば遊びを教える ・しりとり  ・〜の音がつく言葉はなあに?  ・絵かき歌
・50音のかえ歌づくり  ・動物には何があるかな?
語彙を増やす 海や川、山、公園での屋外の生活体験をさせる等、いろいろな体験をさせます。家庭ではひとり語りや平行語りを実行してもらいます。
体験を話させる 一日の生活の流れを話させたり、特別な体験を話させたりします。
反対語を教える ・明るい:暗い  ・暑い:寒い  ・うれしい:悲しい  ・冷たい:熱い  など
位置関係の言葉を教える 上、下、中、前後、左右、横、〜番目を教えます。
比較に関する言葉を教える 大小、長短、高低、太い細い、多い少ない、重い軽い、速い遅い、深い浅い、強い弱い、などを教えます。
日付や時間の流れを教える カレンダーで何日かを知り出席カードにシールをはる
今何時かな?、昨日、今日、明日、朝、昼、夜などのことばを教えます。

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