2.「アイコンタクト」について

【新生児のアイコンタクト】
 新生児は誕生直後よりいろいろな不安感を持つと泣きます。
 赤ちゃんが泣くと、泣きをしずめるために、大人は抱っこをしてあやしたり、いろいろな対応をします。すると、赤ちゃんは大人の世話を受けながら、自分をこんなにまで安心させてくれる人は誰かな?と抱っこしてくれる大人をじっと見つめます。

 ここに赤ちゃんが見つめる、それに対して大人が見つめ返す(目と目を合わせる)というやりとりが起こります。これが「アイコンタクト」です。
 さらに、赤ちゃんは大人との接近や接触を求めてきますが、大人は赤ちゃんをあやしたり、世話をする時、ごく自然にアイコンタクトをして関わっていきます。
 新生児期から赤ちゃんは抱っこされて大人が目を見つめながら話しかけたり、歌を歌うと、大人の目を見つめます。
 こうして赤ちゃんはアイコンタクトによって自分を守ってくれる人を認知し、大人に対する信頼を深め「きずな」を作っていきます。

【欲求の泣きにおけるアイコンタクト】
 生後1ヵ月半ばから2ヵ月ごろになると赤ちゃんは、オッパイが欲しい、ねむたい、暑い、寒い、かゆい、抱っこして欲しいなどのいろいろな欲求を伝えるために、泣き声を変えて泣きます。
 それは新生児期からお腹がすいたり、眠かったり、暑い、寒い、かゆいなどの不安感から泣いた時、その泣きに応えて、大人がオッパイを飲ませてくれたり、暑さ、寒さ、かゆみなどの不安感を取り除いてくれたという体験から、赤ちゃんが泣けば、周りの大人が自分の欲求に応えて対応してくれることを認知し、不安なときには泣けば解決することを覚えたからです。
 この頃の泣きは、単なる泣きから、欲求を伝えるための泣きとなり、意思を伝達する言葉に代わるものとなります。

 それに対して大人は赤ちゃんの泣き声を聞き分けて、欲求に応えるように対応します。
 大人が赤ちゃんの欲求を理解して適切な対応ができるようになると、しだいに赤ちゃんは、大人が接近してくる姿を見たり、さらに、アイコンタクトをして語りかけられると、自分の欲求がかなえられることを認知して、泣きやみます。また、赤ちゃんは泣いた時、なぐさめられておちつくと大人の顔を注目します。
 このように、赤ちゃんの泣きにはそれなりの理由があり、大人の泣きとはまったく違って、相手との意思の疎通を図る手段です。

【微笑行動におけるアイコンタクト】
 生後2ヵ月半ばから 3ヵ月頃になると赤ちゃんは、大人の笑いにあわせて自分がにっこりと微笑すると、周りの大人がそれに反応してよりいっそう、笑いかけてくれることを認知します。
 さらに微笑を続けると、周りの大人がもっと反応してあやしてくれることを覚え、今までのように何でも泣いて欲求を満たしてもらおうという手段以外に、赤ちゃんはあやしてほしい時、もっと遊んでほしい時は、ほほえむほうが、いっそう相手と豊かにコミュニケーションができることを習得し、相手をひきつけようと盛んにアイコンタクトをしながら微笑するようになります。

 たとえば、大人が赤ちゃんを見つめながら笑いかけると赤ちゃんも喜びを感じて大人を見つめながらほほえみ返したり、大人が手をさしだすと抱かれることを期待してほほえんだり、大人の気配を感じるとその方向を見つめ、大人を接近させようとしてほほえみます。
 抱っこにしても、じっと抱っこされるよりもゆすってほしい時は、抱きてを見つめてほほえみます。笑いに引き込まれて大人がゆすると、ゆすり続けてほしくて、笑い続けます。
 赤ちゃんの微笑行動は人を強くひきつけて、もっと遊んでほしいというサインです。
 したがって、生後3ヵ月ごろに微笑行動ができるということは「遊びの欲求」の情緒が育ち、対人関係がとれるようになったことを裏付けることでとても重要です。

 以上、新生児期のアイコンタクト、2ヵ月頃の欲求の泣き、3ヵ月頃の微笑行動について述べてきましたが、欲求の泣きや微笑行動においてもアイコンタクトがポイントです。
 アイコンタクトが成立しにくい赤ちゃんは、欲求の泣きの段階で異常な泣き方をし、微笑行動の段階において相手をひきつけるための微笑ではなく、一人笑いをします。

【アイコンタクトをしない赤ちゃん】
 大人が赤ちゃんと目を合わせようとしても合いにくかったり、また赤ちゃんのほうから目を合わせようとしない赤ちゃんがいます。
 こうした赤ちゃんは生まれつき大人に接近したり、接触したいという欲求が弱いためで、積極的に抱っこを求めたり、アイコンタクトをして大人を認知しようとしません。
 赤ちゃんが自分を安心させてくれる大人を認知しようとしないということは、赤ちゃんが他人を受け入れようとしないことで、その後も対人関係が育ちにくくなります。また、アイコンタクトをしにくい赤ちゃんは抱っこが嫌いです。
 特に、大人の腕の中に抱かれる密着した抱っこをされることをとても嫌います。抱っこ嫌いな赤ちゃんは大人にあやされるより、一人で すごす方を好むので、自然と大人との関わりが少なくなります。
 アイコンタクトの不成立と抱っこ嫌いは、自閉症の特徴でもあります。
 アイコンタクトの立場で言えば、抱っこはアイコンタクトをかわす最も効果的な手段でもあり、アイコンタクトと抱っこは、切っても切りはなせないものであります。
 抱っこは赤ちゃんの子守の基本的な行動であり、将来、人との触れ合いの土台となる大切な行動です。アイコンタクトもまた、将来、人とのお付き合いにおいて欠くべからざる行動です。アイコンタクトや抱っこを嫌う赤ちゃんには、大人のほうから積極的に抱っこをして、アイコンタクトをかわすように赤ちゃんに働きかけることが大切です。

【まとめ】
 人は誰でもコミュニケーションをかわす時、相手をよく見つめて会話をしたり、相手との関係をなごやかなものにするために笑顔で接したり、悲しみや喜びを泣くことで表現します。人は、人と付き合うときの3つの行動(アイコンタクト、泣く、笑う)を生後3ヵ月の間に習得します。人は赤ちゃんの時期に土台を作るのです。

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