社会性を育てる

 磐城学園入園当初の子供は名前を呼ばれるとチラッと呼んだ人のほうを振り向きますが、すぐに無視してしまいます。また、目の前にある玩具に手を出しますが、それを使って遊べず玩具を散乱させるか、それとも玩具には目もくれずすべり台にかけのぼったきり、しばらく降りてこなかったり、または目的もなく走り回ります。
 親が側にいても親に接近したり、甘えていく様子がありません
 親に乳幼児期の様子をたずねると、
  ・「手がかからなくて楽だった」
  ・「よく泣きつづけていた」
  ・「人見知りをしなかった」
  ・「喃語を言わなかった」
  ・「目が合いにくかった」
  ・「あやしても笑わなかった」
  ・「泣いた時、抱っこするよりベッドに寝かせておいたほうが早く泣き止んだ」
  ・「一人で遊んでいておとなしかった」
  ・「CDやテレビがかかっているとおちついていた」
                                  などという答が返ってきます。
 赤ちゃんの心の成長には、前述しましたように愛着形成という親子の「きずな」となる最も大切な発達過程があります。この発達過程を踏んで2才〜4才になっていれば上記のような問題行動は起こらないわけです。
 心の成長過程で未発達のものがあるために月齢相応に社会性が発達できないでいるのです。発達に問題をもつ子供は乳幼児期の愛着形成でつまずき、その後の社会性の発達が順調にできないでいることがほとんどです。

 〈呼ばれても、しら〜んぷり〉


【1、愛着が育たない赤ちゃんについて】
 生まれつき甘えが弱いために、赤ちゃんのほうから親に対して甘えのサインが出せず愛着を育てることができない場合と、甘えは持っていても親のほうが甘え方を教えてくれないために十分に甘えることができず、愛着を育てることができない場合があります。
 いずれにしても、社会性の発達の土台である愛着形成に問題をかかえたまま月日が過ぎたのですから、対人関係の土台となる人見知りも見られず、社会性を発達させることはできないわけです。


〈 「ママ、だっこ〜」 (え〜、どうやってしてあげたらいいのかしら〜?) 〉


【2、愛着を育てる学園の取り組み(保育カリキュラム)】
 磐城学園では愛着形成をテーマにして、家庭においては抱っこやふれあい遊び、お相撲に取り組んでもらいます。また、一貫性のある「しつけ」にもこころがけていただいています。
 一方、磐城学園では、リズム遊びや課題学習、体操などで指導者の指示を受容すること、またしつけを受容することの指導を行ない、子供たちの心に強く触れていきます
 そうすると子供の心に甘えたい気持ちが育ってきます。この甘えたい気持ちに親や指導者がしっかりと答えて甘えさせてあげると、指導者の指示を受容したり、おちついて行動ができるようになります。
 学園では認知面や運動面の発達をはかる指導もしていますので、甘える心が芽生えると急速に精神的にレベルアップします。特に認知面が著しく発達しはじめます。
 また、入園当初より集団生活に参加して、友達と関わりあってリズム遊びをしたり、みんなで競い合う運動やゲームなどに取り組んでいますので、社会性を育てるためのトレーニングは日々の保育で実践されています。
 したがって、愛着形成が可能になると友達と積極的に関わって遊ぶようになります。

〈「大好き〜!」:抱っこしてホッペすりすり〜〉


【3、社会性の遊び】

テーマ 具体的な内容
ふれあい遊びをする 抱っこ、くすぐりっこ、たかいたかい、お馬さん、にらめっこ、一本橋こちょこちょ、パクパク人形、肩車、手をつないで散歩、お相撲、いないいないバアー、手遊び歌
平行遊びを教える 友達のそばで同じ遊びをする(積み木、ブロック、ミニカーなど)
積み木などで同じような遊びをしていても、全く別のイメージで遊んでいる子供同士の遊びに指導者が仲間に入って、双方の遊びを補って3人で一つの遊びができるように指導する。
玩具など他者が使っている物を、むりに奪ってはいけないことを教える。
模倣遊び 友達や大人の遊び方を模倣して遊ぶことを教える
例:どろんこ遊び、積み木やブロック遊び、ねんど遊びなど
友達との関わり ・2人でダンスをする  ・多人数でダンスをする  ・ボールを転がし合う
・ボールの投げっこをする  ・気のあった友達と一緒に遊ぶ
・一人で遊ぶよりも友達のそばで遊ぶように誘導する
・園で決められた簡単なルールを守って友達と遊ぶ  ・2〜3人でごっこ遊びをする
・友達と一緒に行進する  ・友達同士で追いかけっこをする
・年下の子供の世話をする
ゲームを教える 手つなぎ鬼、しっぽとり、トランプ、かるたとり、鬼ごっこ、かくれんぼ、イスとりゲーム、絵合わせゲーム、オセロ
お手伝い遊び ・模倣してお手伝いをするように誘導する
・意識的にお手伝いをするように誘導する
例:片付け、配膳、イスを並べる、学習道具の準備や片付けなど
ごっこ遊び ・2〜3人で遊ぶことを教える
・一人よりも仲間と遊ぶ方が楽しい気持ちを育てる
・仲間入りの仕方を教える
・玩具はゆずりあって使うことを教える
例:ままごと遊び、買い物ごっこ、学園ごっこ等

〈お相撲ワッショイ〉

〈友達と一緒に行進だ!〉

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