【本の要旨 4】 |
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「赤ちゃんのみつめる目」の要旨 |
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1、人との関わりをスタートさせる
人は、生涯人と関わって生きていきます。人との関わりをスタートさせるのは、赤ちゃんのみつめる目です。赤ちゃんは抱っこされている時、抱き手の顔をじーっとみつめます。このみつめる目が人との関わりを生むのです。
なぜなら、「目は人を受け入れる窓口」だからです。赤ちゃんはみつめる目で人を受け入れることで、人と関わり始めるのです。みつめる目は生来備えられているものです。
そこで赤ちゃんは0ヵ月より、抱き手の顔をみつめるのです。
ところで、みつめる目の最初のお仕事は、人との関わりをスタートさせることですが、その後もみつめる目は、発達途上に出るさまざまな諸行動において、大きな働きをします。どんな働きでしょうか?
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2、諸行動におけるみつめる目の働き
@はしゃぎ反応
ママが「イナイイナイバー」をすると、赤ちゃんはイナイイナイバーをじーっとみつめます。みつめた後に赤ちゃんは「キャッキャッアハハハハ」と笑ってはしゃぎます。赤ちゃんがはしゃいだのは、ママのイナイイナイバーをみつめたからです。
つまり、みつめる目がはしゃぎ反応を発動したのです。
A人見知り
知らない人を見ると、赤ちゃんはじーっとみつめた後に、顔をこわばらせて泣き出します。赤ちゃんが泣き出したのは、知らない人をみつめたからです。
つまり、みつめる目が人見知りを発動したのです。
Bガラガラをつかんで遊ぶ
赤ちゃんはそばにあるガラガラを見つけると手を伸ばしてつかみ、ひとしきりガラガラで遊びます。赤ちゃんがそばにあるガラガラに手を伸ばしたのは、ガラガラをみつめたからです。
つまり、みつめる目がガラガラに手を伸ばす行動を発動したのです。
C指さし行動
散歩の時、赤ちゃんは自動車をみつけると、自動車を指さします。ママが「ブーブーがきたね」と応えると、赤ちゃんは納得します。赤ちゃんが自動車を指さしたのは、自動車をみつけたからです。
つまり、みつめる目が指さし行動を発動したのです。
D積木の移し変え
赤ちゃんは手元をみつめながら、両手の間で積み木の移し変えをします。積み木の移し変えができるのは、手元をみつめるからです。
つまり、みつめる目が移し変えを援護するのです。
Eバイバイをする
パパがバイバイと手をふると、赤ちゃんがパパのバイバイを見て手をふります。赤ちゃんが手をふるのは、バイバイのふり方をくり返し見て学んだからです。
つまり、みつめる目がバイバイと手をふることを援護しているのです。
Fハイハイをする
遠くにあるボールをみつけると、赤ちゃんがボールをめざしてハイハイをします。赤ちゃんがボールをめざして移動できるのは、ボールをみつめながらハイハイをするからです。
つまり、みつめる目がハイハイを先導するのです。
以上の行動からわかることは、みつめる目が発動や援護や先導という働きによって、心身の発達途上に出る諸行動に関わっているということです。
みつめる目の働きは,かくれた働きであるために、あまり認識されていません。
しかし、障害児教育においては、みつめる目が育っているかどうかによって、教育の成果が決まるといっても過言ではありません。
同様に赤ちゃんの心身の発達は0ヵ月のアイコンタクトにかかっていると言っても過言ではありません。
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3、赤ちゃんの「オギャーオギャー」の泣きについて
「泣くことは赤ちゃんのお仕事」といわれほど赤ちゃんは実によく泣きます。
赤ちゃんはかわいくてたまらないけれど、泣かれることは閉口だと弱音を吐きたくなるものです。ところで、どうして赤ちゃんは泣くのでしょうか?
@「オギャーオギャー」の音声について
生まれて数ヵ月間は、赤ちゃんの呼吸器官の機能が未熟です。そのために度々息苦しくなったり、ささいなことが原因で呼吸が浅くなったりして、呼吸がピンチにおちいります。
すると赤ちゃんはピンチを解決するために、大きく息を吐いてたくさん息を吸うことをします。
この大きく息を吐く時に喉頭の声帯弁が振動して「オギャーオギャー」の音声が出ます。「オギャーオギャー」の音声は、息を吐くことによって出る音声ですから呼気音です。呼気音なのに、古今東西誰もが「赤ちゃんが泣いている」と称しています。
赤ちゃんの泣き声を聞いた人々は、泣いていて可哀そうだと思います。
赤ちゃんは必要を充たす呼吸をするために「オギャーオギャー」の呼気音を出さなければならないことを理解したいものです。
A赤ちゃんの泣き(呼気音)はいいことづくめ
赤ちゃんが泣いている姿をみると、可哀そうにと思いますが、泣きは赤ちゃんにさまざまな恵みをもたらします。
イ、呼吸器官の機能が発達する
大きく息を吐いて、たくさん息を吸うという呼吸の営みは、呼吸器官の働きを活発にします。その結果、器官の機能を発達させます。
先人は「泣くと肺が丈夫になる」と言って、泣きを肯定的に受けとめました。
ロ、泣きはお世話を引き出す
赤ちゃんが泣くと、人々はかけつけてお世話をします。そしてオッパイを飲ませたり、抱っこをしたり、あやしたりとなにくれとお世話をします。
さて、赤ちゃんは人のお世話を受けなければ、一日たりとも生きることができません。何もできない赤ちゃんにとって、泣きは人のお世話を引き出す天与の術なのです。
ハ、泣きはアイコンタクトを引き出します
赤ちゃんが泣くと人々は抱っこをしてなだめます。赤ちゃんは抱っこで深い腹式呼吸ができるようになって泣きやむと、抱き手の顔をみつめます。
アイコンタクトをとった目は、みつめる目として成長して、心身の発達を推進する働きをするようになります。
ニ、泣きは愛着を育てる
赤ちゃんは息苦しくなったり、お腹が空いたり、不快な刺激を受けたりしてピンチの状態に陥ると泣きます。泣いた時にお世話をしてピンチの状態から助け出してくれる人は、赤ちゃんにとって救世主です。そこで赤ちゃんは助けてくれた人に信頼と思慕をよせるようになります。つまり、愛着が育まれるのです。
愛着は対人関係の育ちの土台となるものです。
ホ、泣きは笑いとお語りの音声を育てます
泣き声も笑い声もおかたりの音声も同じ呼気音です。泣き声が大きくなれば、笑い声も大きくなり、おかたりの音声も大きくなり、長くなります。
つまり、泣き声が大きくなればなるほど呼吸器官の機能が向上するからです。
へ、泣きは快食・快眠・快便をもたらします
深い腹式呼吸は、快食・快眠・快便をもたらします。
その深い腹式呼吸に導くのは泣きです。このように泣きは赤ちゃんにすばらしい恵みをもたらします。
ト、泣くことは音声を出すトレーニング
赤ちゃんは0才代より、ことばを話すための準備を始めます。その準備のひとつに、音声を出すトレーニングがあります。赤ちゃんが音声を出す場面は、泣きとおかたりと、笑いです。泣く時は「オギャーオギャー・アーンアーン」の大きな音声が出ます。
笑う時は「キャッキャッアハハハハ」と大声で笑います。おかたの時は「アーア―ン・ウックンアー」の音声が出ます。特に欲求を伝える泣きでは、泣きに対応してもらえるまで大声で泣きつづけます。大声で泣くことは、音声を出すトレーニングとなるのです。
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4、泣きに異変が生じている
@呼吸援助抱っこへの異変
当施設では長年呼吸援助抱っこをしていますが、近年は大きい声で泣かなかったり、抱っこへの抵抗が弱かったりと異変が生じています。
数年前までは、抱っこした途端に大きい声で泣き叫びました。ところが近年は大きな声で泣かなくなりました。それでも2〜3ヵ月抱っこを続けていると、大声で泣いたり、激しい抵抗をするようになります。親達に赤ちゃんの頃の泣き声を聞くと、「大きい声でなかなかった」との返事がかえってきます。泣きに異変が起こり始めています。
A赤ちゃんの育つ環境の変化
昔は布のオムツで、ぬれると不快を覚えて泣きました。現代は良質な紙オムツで、不快を覚えません。また、昔は暑さ寒さに耐えられなくて泣きました。現代は冷暖房設備の完備によって泣くことが減少しました。更に育児用品やテレビやCDや玩具などの普及にり、赤ちゃんが育つ環境に変化が起こり、泣くことの減少をもたらしました。
B泣かせないようにお世話をする風潮
昔の人は「泣くことは赤ちゃんのお仕事」と、泣きについての明言しています。
ところが現代は、泣きの姿に耐えられなくて、少しでも泣かなくてもすむように先手を打ったお世話をする風潮が強くなりつつあります。
泣きは赤ちゃんにとって大切なお仕事であることを認識してほしいものです。
赤ちゃんは泣くことで、たくさんのいいことがもたらされるのです。
「寝る子は育つ」と言いますが、「泣く子は育つ」ということばを進言します。
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